【新人ライターのもうひとつの仕事術】今すぐできる小さなことから始める

□目的からはじめるのか、手段からはじめるのか、それが問題だ

 仕事の世界では、はじめに目的や目標を設定して、そこから逆算して計画をつくり実行することが良いこととされています。でも新人ライターにとっては、それはむしろとまどいを呼ぶ方法だと思うのです。どこかしら無理があると思うのです。ボクは新人ライターにとっては『今すぐできる小さなことから始める』ほうがふさわしいと考えています。

「今すぐできる小さなこと」とは、「小さいことかもしれないけれども、ボクたちが今、すぐに実行可能な手段」のことです。目的や目標の逆算から実行計画を立てるのではなくて、その手段を使ってできることを一生懸命考えて、そこから仕事を始める方法のことです。

理想の未来像を描いて、その未来像の実現を目的にして、その目的の達成にまい進する方法があります。例えばプロライターとして自立して出版社からひっぱりだこになる夢を描くとか。ベストセラーを出版する未来像を強く願うとか。あるいは「〇〇ケ月後に月□□万円の収入」の目標を設定して、その目標達成の実行計画をつくるとか。そしてそれら目的や目標の達成に全力を尽くすとか。

もちろん夢を描くことは大切ですし、計画を立てることが意味がないわけではありません。今でも企業では、3/6/12か月単位で、はじめに成果目標を設定して、おわりに目標を達成したかどうかをふりかえる「目標によるマネジメント(Management By Objectives)」が広く行われています。ボク自身もこのやり方を叩き込まれてきまし実行してきました。

「書く仕事」においても、この方法は有効です。でも状況を選ぶのだと思うのです。この方法を有効に使えるのは、おそらく広く深く経験と実績を積んできた人です。案件を継続的に獲得できる、安定した状況づくりに成功した人に限られると思います。そういった状況づくりに成功した人にとっては、理想の未来像がリアルに描ける可能性も高いし、その状況の延長線上に目標設定が容易にできるでしょう。

でも新人ライターにとってはハードルが高すぎます。なぜならばはじめる時には、自分にとってどのような目的・目標がふさわしいのか。妥当なのか。何が正しいのか。何も知らないからです。

□何が正しいのか、誰も、何も知らないのだ

Netflixの共同創業者、マーク・ランドルフは「何が正しいのか、誰も、なにも知らないのだ」と言いました。マークはかって7つのスタートアップを起業しました。しかし、もしもスタートアップの初日に、どの起業が成功して、どの起業が完全な失敗に終わるかをたずねられたら、自分はこのように答えたと言います。「絶対にわからなかった。他の誰にもわかるはずがない。なぜなら、本当に誰もなにも知らないからだ」。

マークの主張はこういうことです。

もしも誰も何も知らないのであれば、つまりアイデアを試す前に、それが良いアイデアなのか悪いアイデアなのか全く分からないのであれば、あなたがしなければならないことはただ1つです。
あなたは何かをしなければなりません。何かをつくり出さなければなりません。何かをテストしなければなりません。何かを売らなければなりません。何かを試さなければなりません。
なぜなら、あなたはそれについて考える3ヶ月よりも、実際にそれを行う1時間の方が多くを学ぶからです。

マークの言葉が、なぜ「今すぐできる小さなことから始める」方が良いのかについて、雄弁に説明してくれています。

出典) Video from BT Panorama | Nobody Knows Anything: Marc Randolph, Co-founder Netflix

□ではボクの「今すぐできる小さなこと」はなにか

このブログでは、文章をかくことを「コンテンツをつくる」と考えます。

コンテンツをつくるという言葉は、記事や本、動画、音楽、ウェブサイトのページなど、ボクたちが楽しんだり、学んだり、情報を得るために見たり聞いたりするものをつくることを指します。この場合の「コンテンツ」とは、具体的には「内容」や「中身」という意味です。つまり、本や動画、ウェブサイトなどに含まれる情報やストーリー、画像などがそれにあたります。

「つくる」という表現を使うのは、コンテンツはただ自然に存在するわけではなく、誰かが考えて、計画し、制作活動を通じて生み出す必要があるからです。

例えば、本を作る場合、著者はまずアイデアを思いつき、それを言葉にして文章を書き、編集して整え、最終的には本の形にします。動画も同様で、企画を立て、撮影し、編集して、視聴者が見ることのできる形にする必要があります。

この過程は、何かを「つくる」ことそのものです。アーティストが絵を描くのと同じように、コンテンツクリエーター(コンテンツを作る人)は、自分のアイデアや知識、技術を使って、他の人に価値を提供する何かをつくりだします。だから「コンテンツをつくる」と言うのです。

簡単に言うと、「コンテンツをつくる」とは、人々が楽しんだり学んだりするための「もの」や「情報」を、アイデアから形にすることです。そして、その過程は、何かを「創造する」ことそのものです。

2000文字程度の文章を書く場合は、「コンテンツをつくる」ことを、あまり意識する必要はありません。しかし新人ライターとして経験を積んでいき、1万文字の文章を書くようになれば、たとえばコンテンツをつくる技術として、文章の構造を上手に構成することが必要になります。

それではこのブログではこれから、どのような「今すぐできる小さなこと」を考えていくかということになります。それは大別するとふたつのことです。ひとつには「コンテンツをつくる」に関することです。もうひとつは「コンテンツをうる」に関することです。このブログではこれから、このふたつのことについて考え、そして実践に向かうことになります。

画像著作者:fabrikasimf/出典:Freepik